前田義夫さんの個展「都視景観」に行った

写真家前田義夫さん個展に行く。前田さんの個展のことは、「スペースふうら」開いている「春の写真展」の出展者、村松さん、久米さんに教えていただいた。何とか最終日に間に合った。
「都視景観」この言葉は前田さんのオリジナル。この言葉にあるように都市を「視」続けて写真を撮る。「都市」はさまざまなものがごった煮のようにある空間。無機質なものもあれば、その無機質な中に息づくものもある。この展覧会では都市の中の光と影、そして、切り取られた形の面白さがあった。
 ビルが林立する空に浮かぶ丸い形をした雲が二つ。そして、そのまた上にやわらかい太陽の光が広がる空。当たり前のような光景なのだが、雲がとても優しい表情をしている。そして、光が心地よい。この表情はこの一瞬なのだと見るものは理解する。この光の下で街はいろんな表情を作っている。階段に写る影の形。工場の壁面と一方通行の矢印。ビルが作り出す空へ向かう階段。すべてモノクロームの作り出す光と影と形の面白さがここにあった。
展覧会では数年前の作家の写真も見ることができた。錆びている金具をとらえたものだった。錆びていくものには、時間と崩壊を予感させる。これもとても心を動かされる写真だった。都市をこのような目線でとらえることができるのだな、と楽しませてもらった。これから街を歩く楽しみも増えた。
実はこの写真を見ている私の中によぎったのは、放射能に汚染されて居住不能になった都市の風景だ。そのときでも太陽は光を作り、影を作り、雲はあるのだ。人がいなくても・・・・。このような想念につきまとわれた数時間だった。もう一度みたい写真だ。
追記
この展覧会を開催されたのは生駒駅前にある「CLASS」というギャラリー。とても若い意欲的な造形作家が運営されている。この展覧会が終わったら壁面を黒くするという。黒い壁面のギャラリーは数少ないらしい。また訪れてみたいと思う。