詩誌「引力」68号  その2

「引力」68号に詩を掲載しました。


  風と羅と
         畑 章夫

ふう
丸い葉が揺れ
隣の葉が揺れ
またその隣の
虫に食われた葉も揺れ
枝が音を立てて揺れる


ふう
一本の草がなびき
隣の
またその隣の草にも伝わって
大きなうねりになって
川の土手をかけあがって行く


そのような風を受けて
ふう と
息を吐くと
小さくオリが出て行く


ふう
もう一度吐く と
肩の重しが抜けていく
次は大きく
大きく吸い込んで
ふうう と


ふうを
薄い柔らかい布で包み
ズックを履いて歩く
たどり着かないところへ